活性炭入門 | 活性炭の用途気相用
空気浄化
空調機
精密機器室、電話交換室、美術館等では精密機器、美術品等の汚染や腐食の防止のために又は循環空気の浄化のために造粒活性炭又は繊維状活性炭フィルターが使用されています。家庭用空気清浄器にも活性炭フィルターが使用されています。
ガスマスク
揮発性有機化合物の吸着には活性炭単体が、また酸性ガス、アルカリ性ガス、特殊ガスの吸着には添着活性炭が用いられます。
オゾン分解
オゾン処理を行っている浄水場や、複写機から発生するオゾン等は、活性炭の触媒作用によってオゾンを酸素に変えます。浄水場では粒状活性炭、複写機にはハニカム状活性炭が用いられています。
脱臭
下水及びし尿処理場
下水臭又はし尿臭の脱臭に粒状活性炭及び添着活性炭が単独又は併用して用いられます。臭気は硫化水素等硫黄化合物、アンモニア、メルカプタン類等が含まれています。悪臭物質の閾値を次に示します。
物質名 | 閾値 :ppm |
適用銘柄 「クラレコール®」 |
---|---|---|
アンモニア | 1.5 | T-B |
メチルメルカプタン | 0.00007 | GG, G-H |
硫化水素 | 0.00041 | SA, G-H |
硫化メチル | 0.003 | T-C |
トリメチルアミン | 0.000032 | T-B |
二硫化メチル | 0.0022 | GG, T-C |
アセトアルデヒド | 0.0015 | T-FU |
スチレン | 0.035 | GG, G-H |
プロピオン酸 | 0.0057 | GG |
i-吉草酸 | 0.000078 | GG |
酢酸 | 0.006 | GG |
n-吉草酸 | 0.000037 | GG |
物質名 | 閾値 :ppm |
適用銘柄 「クラレコール®」 |
---|---|---|
トルエン | 0.33 | GG |
キシレン | 0.38 | GG |
酢酸エチル | 0.87 | GG |
メチルイソブチルケトン | 0.17 | GG |
i-ブタノール | 0.011 | GG |
プロピオンアルデヒド | 0.001 | T-FU |
n-ブチルアルデヒド | 0.00067 | T-FU |
i-ブチルアルデヒド | 0.00035 | T-FU |
n-バレルアルデヒド | 0.00041 | T-FU |
i-バレルアルデヒド | 0.0001 | T-FU |
(出典:日本環境衛生センター)
(作成者:永田好男 竹内教文)
工場排ガス
工場より排出される有害ガスは、業種によって種々のガスがあり、対象のガス成分に応じて活性炭が選ばれます。
冷蔵庫脱臭剤
通気性のある容器に粒状活性炭を入れ、庫内の隅に置くことによって、温度差によるガス対流を利用して脱臭が行われます。活性炭には約1年の寿命があり、新しい脱臭剤と交換しなければなりませんが、クラレでは長寿命の低温脱臭触媒を開発しております。
ガス分離、空気中の窒素分離
窒素発生装置
通常の活性炭では、空気中の窒素と酸素を分離することは出来ませんが、分子篩炭(Molecular Sieving Carbon) が開発されて、窒素(4.0×3.0Å)と酸素(3.9×2.8Å)の吸着速度の差を利用して、分離可能になりました。吸着初期には吸着速度差が大きいので、その初期の短時間(1~2分)に窒素・酸素を分離します。吸着時に加圧すると吸着量は大きくなり、それを減圧すると吸着した酸素を脱着します。
分子篩炭を充填した塔を2塔で吸着-脱着を交互に繰り返せば、連続して窒素を分離することが出来ます。クラレでは装置一式(窒素発生装置:「クラセップ®」)を製造販売しております。
その他のガス分離
その他のガス分離の例としては、次のものがあります。
原料ガス | 組成比 | 製品ガス(純度) |
---|---|---|
メタン:二酸化炭素 | 60:40 | メタン(98%) |
水素:二酸化炭素:一酸化炭素 | 75:23:2 | 水素(99.999%) |
ヘリウム:空気 | 95:5 | ヘリウム(99.99%) |
溶剤回収
レーヨン工場の二硫化炭素、アセテート工場のアセトン、磁気テープ工場のシクロヘキサノン等種々の工場で排出する溶剤を回収する活性炭です。活性炭は、造粒活性炭(固定床)、繊維状活性炭(固定床)等が使用されますが、回収する溶剤が変質しないように、活性炭の触媒性を抑えています。
排ガス処理
排煙脱硫・脱硝
石炭を燃料とする火力発電所や工場からの排煙中には SOx、NOxが含まれています。脱硫・脱硝の方法の一つに活性炭吸着法があります。吸着したSOxは加熱によりSO2として回収されます。脱着時に活性炭の炭素が消耗するため、新炭が補充されます。又、通気抵抗の点から粒の大きさは8~9mmの大粒子のものが用いられます。
ごみ焼却場のダイオキシン除去
ごみ焼却炉より排出するガスの中に不完全燃焼に起因するダイオキシン類の有害物質が含まれています。排ガスに粉末活性炭と石灰を吹き込み、ダイオキシンを除去する方法があります。
たばこ用
たばこの喫味向上のために、日本では一般にフィルターの一部に活性炭が用いられています。活性炭を用いたフィルターには、アセテート + 活性炭入りアセテート(Dual Filter)、アセテート+活性炭+アセテート(Triple Filter)、活性炭入り紙(Neo Filter)の3種類があります。
自動車のキャニスター
自動車の走行中及び停車中に、ガソリン燃料タンクとかキャブレターより放散されるガソリン蒸気は、大気汚染の原因になるので先進国ではその放散量を規制しています。活性炭を入れた容器(Canister)を、ガソリン蒸気の発生源と接続してガソリン蒸気を吸着させ、自動車の走行中に取り入れる新鮮空気によって脱着させ、脱着したガソリンはエンジンで燃焼させます。このキャニスターは吸着-脱着を繰り返すため半永久的に使用されます。
このシステムをELCD(Evaporative Loss Control Device)と言います。更に、米国では、ガソリンスタンドで自動車への給油時に放散されるガソリン蒸気の量を規制しており、その対策にもキャニスターが用いられます。このシステムをORVR(Onboard Refueling Vapor Recovery)と言います。この用途の活性炭は、ガソリンの吸着量は大きく、且つ、新鮮な空気の通気で容易に脱着するという独特の性能が必要です。
ガソリン蒸発損失防止装置
気相用に用いられる「クラレコール®」
気相用に用いられる「クラレコール®」は次の通りです。
銘柄 | 形状 | 粒度(mesh) | 用途 |
---|---|---|---|
PDX | 粉末 | 100メッシュ以下 | ダイオキシンの除去、脱臭 |
GG | 破砕状 | 4x8、8x14、10x20、その他 | 空気浄化、脱臭、たばこフィルター |
GS | 溶剤回収、脱臭 | ||
GA | 4x8、その他 | 脱臭、ガス分離 | |
KG | 顆粒状 | 8x28、その他 | 自動車のキャニスター |
GG | 円柱状 | 2・3・4mmφ 、その他 | 空気浄化、脱臭 |
GS | 溶剤回収、脱臭 | ||
GA | 脱臭、ガス分離 | ||
GN | 2mmφ 、その他 | ガス分離 | |
GM | 2・3・4mmφ 、その他 | ||
SA | 4・9mmφ 、その他 | 空気浄化、脱臭,排ガス処理 | |
GK | 2・3mmφ 、その他 | 自動車のキャニスター | |
T-B | 破砕状又は円柱状 | 4x8メッシュ4mmφ | (添着炭)塩基性ガスの脱臭 |
G-H | 脱臭 | ||
T-C | (添着炭)いおう化合有機物の脱臭 | ||
T-FU | (添着炭)アルデヒド類のガス吸着 |